P.A〜プロジェクト・エンジェル〜1

世界の終わりに

あなたは誰と過ごしますか?

これは終わりの始まりの物語。

今から30年後に世界はオメガクライシスと言うウイルスによって世界の生物のほとんどはデータ化してしまい世界は仮想空間と同じになっていた。

そして、現在の世界では八番目の感染者が出ようとしていた。

彼女を境に感染者は爆発的に増え。そう終わりの始まりが起きようとしていた。彼女は『八番目の魔女』と呼ばれていた。

彼女の名前は『川崎 美詠』私の任務は美詠のデータを阻止する事である。

また、美詠がデータ化して爆発的に感染者が増えたのかは不明である。

次元データ転送技術により私は三十年前に来ていた。

皮肉にも世界のデータ化は新たな技術革新をもたらし過去の世界に行く事が出来るようになっていた。スマホと呼ばれる端末でこの時代に大流行している『プロジェクト・コマンド』なるゲームが世界のデータ化の発信もとであるらしい。そして、私は『私立櫻木高校』に少し手を加え美詠のクラスに転校生として入る事となった。

朝のショートホームルームの時間に私は紹介された。

「『立花 誠』です。よろしくお願いします」

少し、初老で背が低い男性の担任は美詠の隣に座るように言う。

「よろしくね」

「はい」

シートカットで背が低く少し暗めのこの子が『八番目の魔女』?少し、想像と違うけど私の任務は始まったばかりだ。

私が椅子に座ると美詠はこちらを向き。目と目が合う、その瞳は綺麗で不思議な気分にさせてくれた。

「あぁの?私と友達になってくれなせんか?」

「えぇ」

驚いた見た目に似合わず積極的だ。

私が驚いていると美詠は恥ずかしくそう言った。

「ごめんなさい、突然に……自分でもよく分からないけど誠さんとは縁を感じるの……」

縁か確かに美詠に会う為に未来から来たのだから仲良くなる事は好都合な訳だし。

でも、少し迷いもあった。美詠は『八番目の魔女』何が正しく何が間違っているのかも調査対象だからだ。

私は笑顔で答えるが心の中では複雑な気分であったが美詠の笑顔に私は少し安心した。

数日後

授業中に私は美詠の顔を不意に見るとその不思議な瞳に見入っていた。

それは透き通った泉の様であった。

「何を見ているの?」

こちらに気づき美詠は小声で訊ねて来る。

しまった、つい見入ってしまった。

私は少し照れくさそうに目をそらし。

「美詠さんの瞳が綺麗で不思議な気持ちにさせてくれたから」

と、答える。自分で考えても少し恥ずかしい答え方だった。

美詠はクスクスと笑いだした。

その姿はとても可愛く私は美詠が普通の女の子である事を再認識した。

それは追憶の想いに似ていた。

そして、この胸騒ぎは何だろう?

教室の中は相変わらずカツカツとチョークの音が響いていた。

この任務は予想以上に辛いものとなろうとしていた。

そう、私はデータの塊で生身でなく恋など出来る訳もなかったはず。

私は無機質な自宅の部屋でベッドに横になりながらCDというレトロな規格で音楽を聴いていた。聴いていたのはビートルズ。しかし、このバンドは何時の時代でもそれなりに人気があるらしい。

世界の終わった後の自分が聴くと何とも言えない気持ちになる。

データ化された世界では愛とか平和なんて言葉は無いと思うかもしれないが、人の業なのかデータ化された世界ですら争いが絶えない。

時々、思う私は本当に世界を救いに来たのだろうかと。

そんな思いが頭の中をめぐっていると、私は美詠の透き通った瞳を思い出す。

確かにデータ化された世界には存在しない瞳の美しさだ。

『八番目の魔女か……』 

彼女がオメガクライシスに感染してデータ化するとあの瞳も失われるのかな……。

少し、今日の美読との会話を思い出す。

「転校生って事は引っ越して来たのだよね」

「えぇ、遠いところから」

「遠い街か……今度、引っ越しする時は私も連れていって」

「冗談でも笑えないな」

「え?田舎なの?」

「田舎というか、何も無い所だよ」

データ化された世界の個体は確かに一見生物と変わりないが生も死もない空間である。コンピューター上の仮想空間と同じで生命は存在しないある意味、死の世界である。

私が返事に困っていると、

「彼女でもいるの?」

「いないよ」

「ホントかな?」

「いないさ、私はそんな平和な世界から来たのではないからね」

「ごめんなさい」

話しはここで途切れてしまった。私は逃げる様にその場を立ち去った。

その後、私は奥上で空の青さは同じなんだなと流れ行く雲と共に空を眺めていた。

トンボが一匹まっていた。捕まえようするがとどかない。大した問題でないと自分に言い聞かせて。また、空を眺めていると。

「ここに居たのね」

どうやら、美読は私を探していたらしい。当たり前か話の途中で逃げ出したのだから。

「少し心配しちゃった」

笑顔で話しかける美詠に胸が痛んだ、何だろうこの感情は?私は戸惑いを隠せないでいた。

データ化した生物は異性に関心を持たなくなるのが一般的なことであり、この気持ちは何かと自分に問続けたが、きっとこれが恋愛感情と呼ばれるものなのだろう。

「綺麗な青空だね」

「うぅん」

こんな時はどんな話をしたら良いのだろう。

『つ、月が綺麗ですね』

「え?」

流石に丁度よく月など出ているわけもなく……。

「そうね」

美詠は恥ずかしそうに答える。

――――

無機質な部屋にかかる音楽が止まっている。

どうやら、少し寝ていたらしい。

見慣れない天井は今日の出来事がただの夢だったのかと思わせる物であった。

少し夜風当たろう、私はベランダに出てみる。少し月が見れたらと思いつつ、外に出るがもちろん、そう都合よく月は出ていなかった。しかし、『月が綺麗ですね』は今考えても恥ずかしいかな。